現代染色アーカイヴⅥ 透過と浮遊 染の空間表現

2022年3月4日(金) ~ 3月27日(日)

絵画と染色の違いはどこにあるのでしょう。油絵はキャンバスに塗った絵具の表面を鑑賞しますが、染色は染料がしみ込んだ布を鑑賞します。糸の表面だけでなく中心にまで染料がしみ込むので、染色作品は奥行きが感じられる、と言われることがあります。奥行きとは、表面だけにとどまらない空間性を含んでいる、ということです。それでは、生地と染料が生みだす空間性は、作品のなかでどのように生かされているのでしょうか。そんな問題意識をもって染・清流館の所蔵品を眺めてみると、陰影に富む西洋古典絵画が志向してきた重厚な現実感よりも、軽やかな浮遊感や透明感を伴う超現実的な空間表現が数多くみられることに気付きました。今展では、家の中が透けて見えたり、建物が宙に浮いたり、といった「透過」や「浮遊」を感じさせる作品を展示します。もちろん現実にそのようなことは起こり得ませんが、現実を超える表現のなかにこそ作者が伝えたい真実が込められているのではないでしょうか。重力を脱した仮想と幻想の世界を、染色ならではの持ち味とともにお楽しみいただければ幸いです。

出品作家名

麻田脩二/伊砂久二雄/市村冨美夫/井隼慶人/河田孝郎/喜多川七重/来野月乙/日下部雅生/黒田暢/佐野猛夫/髙谷光雄/寺石正作/長尾紀壽/柳楽剛/本田昌史/山本唯与志/吉引ありさ