宇宙を言祝ぐ
2022年1月21日(金) ~
2月13日(日)
第一線の染色作家として新しい表現に挑み続ける八幡はるみ(1956年生まれ)の個展を開催します。八幡は京都市立芸術大学で染色を学び、大学院在籍中から個展やグループ展で精力的に作品の発表を始めます。動植物のスケッチから模様を生み出す日本の伝統的な染色のあり方を踏まえつつ、生地の柔軟性を生かして与えた形態から染模様を導き出す「シェイプド・ダイ」に先駆的に取り組み、コンピューターによる画像加工やインクジェットプリントなど新しい技術を果敢に取り入れ、華やかで独創的な作品世界をかたちづくってきました。花や植物が埋め尽くす色彩豊かな大画面の背後には、「染とは何か」という本質的な問いが隠されています。素材、技法、工芸と美術の関係などについて、八幡は思想的な格闘を続けてきました。作家個人の内面を吐露するのでなく、宇宙を言祝ぐかのような生命感にあふれた作風は、現在の到達点といえます。多彩な技法やメディアを駆使して染を広義にとらえ直す仕事は高く評価され、2013年に大原美術館工芸・東洋館で個展を開催、19年には第32回京都美術文化賞を受賞しました。衣類や小物などプロダクトのデザインも手掛けるほか、京都芸術大学教授として後進の指導にもあたっています。今展は八幡が1992年の第2回から連続22回の出品を続ける「染・清流展」ゆかりの会場で、創作の軌跡をたどります。さまざまな模様がコラージュ的に画面を彩る90年代の作品や、色が横溢し花のむせるような匂いまで感じさせる2000年代の大作、曼荼羅をも思わせる近年の組作品など、変幻する八幡の創作をお楽しみください。
出品作家名
八幡はるみ
私ごとを言えば、人生の節目です。2021年、育ってくれた作家たちとの展覧会「Colors」を実現し、彼らの作品を通して、私が言いたかった多くのことが言え、少なからずの理解を得たという感触を持ちました。そして2022年、教育の現場から離れます。今、小さな自己満足があります。けれど、ひとたび視野を広げ、工芸や染織という目線で言えばまだまだ道半ばです。ここには知らず知らずに溜まった疲労があり、それは制度がおこす経年劣化といえるかもしれません。守られてきた領域に見られるルーティン化が内部では進み、その代わりに場外エリアから勝手に「面白さ」が乱入してきているように感じます。今はまだ「面白さ」としか言えませんが、その実態を見届け、応援することを今後の仕事としていきたいと思っています。今回は私の30年間の作品を並べます。何を考え迷ってきたかもご覧いただきたいと思います。