新鋭染色作家展 柳は緑 花は赤

2023年6月30日(金) ~ 7月30日(日)

蠟染めは蠟の防水性を利用した染色技法である。水に溶いた染料を、防水性を持つ蠟で防染するのだからとても理にかなっている。その制作において作者は布に蠟を置く防染と染色を繰り返しながら、形や色のイメージを重ねてゆく。江島佑佳は軽妙で洒落たデザインを的確な重ね染めと精緻な蝋置きで魅せる。大平彩佳はどこにでもありそうな風景を染料の透明性を生かして異空間を演出する。河合芙幸は花と少女をモチーフに幻想的な画面をつくるがそこにはメルヘンだけでない世界が潜む。齊藤桃乃は自身の内と外の世界を蠟染めとデジタル捺染の技法を併用し新しい表現を模索する。清水佑季はライブ感の溢れるタッチと奔放な色彩の中に潜む既知の事象を浮かび上がらせる。山下茜里は無数に描いた線と色彩の重なりにより人間の内側にある様々なモノやコトを想起させる。柳は緑、花は紅とは、種々様々に異なっているさま、物事に自然の理が備わっていること*とある。6名の作品はそれぞれに異なり、複雑で、様々な姿を見せているが、染料はにじみひろがり、蠟はそれをくい止め、布は支持体としてそれらを受け止めるといった蝋染めの理を備えたものとなっている。また、染料や蠟、布などの素材、防染と染色を繰り返す蝋染め技法、そして鋭く時に柔軟な感性、これらの関係を彼らが真摯に見つめた結果でもある。彼らの活動が蝋染めの地平を大きくひろげてゆくことを願っている。*広辞苑 第7版より抜粋 
監修 : 舘正明

出品作家名

江島佑佳/大平彩佳/河合芙幸/齊藤桃乃/清水佑季/山下茜里