小林祥晃展 -風の記憶-
2023年11月10日(金) ~
12月10日(日)
染色工芸において最も古くからあるロウ染め技法を駆使して、独自の立体的表現作品をつくり続けてきた、小林祥晃氏の作品展を開催します。小林祥晃氏は1995年、金工家小林尚珉氏の三男として生まれ、兄たちもそれぞれ金工・陶芸の分野で活動する、工芸一家のなかで育ちます。大阪芸術大学の工芸科では、天然染料や日本の伝統色研究の権威、吉岡常雄、モダンアート協会の染色家、本野東一の薫陶を受け、その後の作品制作に大いに影響を受けています。卒業後はきもの制作に従事し、そこで徹底的に実際的なロウ染技法と色彩感覚を身に着け、80年代末に作家活動に入ります。1988年の個展を皮切りに日展入選それ以降、そこを中心に活動を展開し、90年代さらにヨーロッパを中心に、海外での活動も目立ってきます。作品は趣味の野外活動で得た、自然を通した心象表現が中心となり、その中で特に砂丘で見つけた風の痕跡は、その後の造形の大きな要素となっています。技術的にも進化し、独学でで発展させた撒(まき)ロウ技法を使って、作品は深みと奥行きを持っていきます。さらに作品の立体的な表現を追求し、立体パネルへの展開やパノラマ的ともいえる大型作品で、空間的試みも行われていきます。そしてそれらの作品は日展をはじめ、国内外の数々の公募展で評価され受賞・入選を重ねていきます。作品発表と同時に小林氏は、日本のロウ染め文化を世界に向けて発信する活動を続けて来たことは、あまり知られていません。そんな中、昨年2022年惜しくも病没され、その想いは中断してしまいます。この展覧会では、彼がロウ染めにかけた熱い想いと、その表現の可能性を感じていただければと思います。
出品作家名
小林祥晃
「風光」(部分)
展覧会風景
「風響」(部分)