カトマンドゥにイメージを求めて 中野光雄展
2020年1月17日(金) ~
2月9日(日)
反復と変奏のラビリンス
染色作家で京都市立芸術大学名誉教授の中野光雄氏(1935年生まれ)は、77年から繰り返し訪ねたネパールの風物に刺激を受け、型染とステンシルの技法を併用した幾何学的モチーフの連作を発表してきました。作品は同一の型で染めた複数の小画面からなり、同じかたちの反復が眩惑や陶酔を誘いますが、色彩はすべての小画面が互いに異なり、絶え間ない変奏は無限で多様な広がりを直感させます。円や方形の繰り返しか曼荼羅的な宇宙観が連想されるとすれば、そこに施された彩色の差異は時間や命の一回性、たとえば「今日と同じ明日はない」といった命題をも想起させそうです。中野氏は1960年に京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)の専攻科を修了しました。当時、大学で指導していたのは型染の稲垣稔次郎とろう染の小合友之助の両教授でした。具象的な作品が多い二人に学びながらも、中野氏がまったく異なる独自の作品世界を展開してきた背景には、「頑固でへそ曲がり」を自称する作家の独創性はもちろん、「懐かしさを感じた」ネパールとの出会いがあり、さらには第二次大戦後の抽象表現の盛行、60年代「の世界を席巻したサイケデリック・アートなどとも、影響とは言えないまでも同時代の創造として、なんらかの呼応があるのではないでしょうか。日本の染色文化は和装とともに発達しました。小合たちが用途から自立した美術として染色の確立に取り組んだ世代とすれば、中野氏は同時代の世界的な美術の潮流につながる染色作品を展開した先駆的な作家のひとりとして位置付けることができるでしょう。今展では60年代の作品から2012年の近作まで、他館の所蔵品もあわせて17点前後を展示します。かたちの反復と色の変奏に満たされた視覚のラビリンス(迷宮)へ、ぜひお出かけください。
出品作家名
中野光雄