コレクション展 染色の抽象表現 part 2 

2024年3月5日(火) ~ 4月7日(日)

染色といえば、花鳥風月などの具象的な作品を思い浮かべがちですが、戦後、多くの染色作家が抽象表現の作品を制作しています。海外の抽象表現主義やアンフォルメルなど前衛的な美術動向は、日本の染色の世界にも無縁ではありませんでした。そうした潮流が日本に紹介された時、染色作家たちは、新しい時代にふさわしい染色工芸の世界を切り拓いていくべく模索していきます。日展系の作家も、現代工芸美術という概念のもとで「作家の美的イリュウジョンを基幹として所謂工芸素材を駆使し、その造型効果に依る独特の美の表現をなす」(1961年「現代工芸美術家協会『主張』」)べくそれぞれの染色表現を追求しました。そのなかで、抽象表現の染色作品も制作されます。また1963年に「染色集団∞(無限大)」を立ち上げた若手作家たちも、反権威を旗印に独自の表現を創造すべく取り組みました。もちろん抽象表現が、前衛やアート志向をのみ意味するものではありません。工芸、美術の範疇にこだわらず、染色素材や技法の特質に根ざして自己を表現しようと制作に向き合った成果として生み出された造形が、従来の写生を基本とした創作のありようとは違った作品形態として結実するのは自然なことだといえるでしょう。そんな中から、ローザンヌ・タピスリー・ビエンナーレをはじめ、国際的に活躍する染色作家も数多く登場してきました。今回は、清流館コレクションの中から多様な抽象表現の作品を2期に分けて紹介します。既成概念にとらわれない染色の豊潤な魅力をご堪能ください。

出品作家名

市村冨美夫/稲垣光知子/加賀城健/新道弘之/舘正明/羽毛田優子/早川嘉英/福本繫樹/福本潮子/本間晴子/むらたちひろ/八幡はるみ/山口通恵

拮抗する方位(部分)

市村冨美夫

凝滲(部分)

羽毛田優子

空間にあるもの(部分)

八幡はるみ