開催中

倉内 啓 展 水の洗礼-変わっていく形と変わらない型-

期間: 2025年1月24日(金) ~ 2月23日(日)

2025年新春の展覧会、倉内啓(くらうちひろし)展「水の洗礼」を開催します。彼は、京都市立芸術大学院で学び一般企業に就職しましたが、その後、沖縄県立芸術大学、広島市立大学で染色を教え、型染による作品を制作し、新匠工芸会をはじめ多くの展覧会で発表してきた倉内啓(くらうち・ひろし)の初期から現在に至る作品を展示します。自然の情景を基礎に据えながら、自己の内面と真摯に向き合いながら形象化された独自のイメージの作品を型染の特質を生かしながら制作してきました。時期によって、作風は変化を遂げていきますが、約30年にわたる創作の軌跡を辿ります。 ******* ******* ****** ******* ******* ****** ******* ****** 「水の洗礼」  冷たい水を何度も潜り抜け植物の繊維が和紙として誕生します。生まれたての和紙の無垢な美しさに清々しい色香を感じます。私はいつもこの生成りの色艶をできる限り損なわず、最低限の仕事で作品が成立できないかと考えています。私の仕事は厳密的には染色とは言えませんが、最終工程で和紙を水洗いします。完成前の作品を水の中に浸けて丸洗いする潔い造形表現は染色以外知りません。この工程は水元と言って、制作中マスキングとして使用した防染糊を取り除くのが主な目的なのですが、和紙が再び "水の洗礼” を受け、彩色の時に過分にのった顔料も洗い流してくれます。和紙の繊維の中に染み込んだ顔料の粒子のみが発色し、画面は本来の姿に近い純粋でふくよかな表情となり、限りなく一枚の和紙に生まれ変わります。私はこの感覚、いわゆる身体(皮膚)感覚に魅了され、和紙と顔料を基本とした素材を使用し、型紙を用いた糊防染による「型染」と呼ばれる防染技法で制作しています。型染の表現の特徴は、模様のフォルムを印刀で彫った形が決定するため、イメージはとても簡潔なものになります。彫られた線は直截的で手描きに比べ遥かに強い表情になり、型紙を使用することで同一パターンの反復や反転、結合が可能となり、画面にリズム感を生み出せます。「素材・技法・プロセス(行程)」に根ざした造形思考は、工芸家に特徴的であるばかりでなく、日本人の精神も表していると考えます。私は日本独自の感性やものづくりの原点を鑑み、伝統的な技法を継承しながら現代的な表現を探求しています。一方で、制作の中で魅了されてきた身体感覚は、染める行為と深く結びついていて、「染まる」という事象が日本人特有の感性であると知りました。あらためて、「染」にこだわった心のひだに「沁」み込む作品を創りたいと思っています。自身の創作を ”祈り” に近い行為として捉え、様々な制約や困難に丁寧に対処して "救い” の様な姿が表れてくれることを願っています。 (型染家 倉内啓)  

出品作家名

倉内啓