この1月から始まったNHK大河ドラマ「八重の桜」のタイトルバックに、自身の作品が採用された。皮膜のような薄い合成繊維の布を折りたたみ、皺をつけ、それを熱で圧着させて制作する繊維造形は、それを包む空気、透過し拡散する光と交響して、空間をあざやかに変容させる。その作品が、幕末から近代の黎明期に凜とした生き方を貫いた、ドラマの主人公・新島八重を象徴するものとして選ばれたのだろう。  徳島に生まれ、1974年に大阪芸術大学工芸学科染織を卒業した。子どもの頃から、布と遊ぶのが好きで、いつも何かを縫っていたという小野山さんは、一貫して「布にひそむ表情を引きだす」というコンセプトのもとに、既製の織布を用いた作品制作に取り組んできた。初期の頃、白や生成りのさまざまな表情の三角形の布を、幾重にも縫い重ね、平面を構成することで内的世界を表現した。そのシリーズの作品「しかくな△」は、1988年に富山県で開催されたコンペ「工芸都市高岡,88クラフト展」でグランプリを受賞している。  次に、小野山さんはそれまでとまったく異なるアプローチで作品制作を行う。着尺を織っていた時にたまたま生じる経糸のアクシデントで布地が引きつれるという現象に着目して、織布の繊維を引くということを制作に取り入れる。繊維を引くことで、布は皺になり、細かなさざ波のような波打ちから大きなうねりのような形状まで、独特のテクスチュアを形成する。これまでだれも試みたことのない手法によって、しかも布の特性を最大限に生かしたこの「プリング・アート」のシリーズで、多様な繊維造形を展開していった。1995年の「方丈の庭」という作品では、中空に浮かぶ漆黒の方形の布から無数の糸が垂れ下がり、空間を圧する重厚な存在感を示している。布を縫い重ねる「加算的造形」に対して、繊維を引くことによる作品表現を「減算的造形」と、小野山さんは呼んでいる。  2000年代になると、これまでの重厚なpullingの作品から一転して、紗のような透けたポリエステル布を素材に、折りたたみ、ときに繊維を引くことで生じる皺も併用しながら、軽やかで空間に羽ばたくような作品を制作するようになる。透過する光が空間を満たし、それが作品の大きな要素になっている。  多くの国際展にも出品するなど活発な作家活動を展開する一方、現在、大阪芸術大学教授として後進の指導に当たり、教育にも熱い姿勢で向き合う。
佐藤能史(染織と生活社編集長)

 

 

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